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キネマ備忘録

映画「批評」というより思いつきの備忘録です。作品ごとに点数化。

Mr.インクレディブル (監督:ブラッド・バード) 65点

映画評

いまさらMr.インクレディブルというのもなんだけど、↓この記事

www.cinematoday.jp

 の、それも「2位」だったこの作品に注目。

 

 

Mr.インクレディブル [DVD]

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インクレディブルって、2004年の公開だからもう10年以上前の映画ということになる。いつか観た記憶があるんだが、話の大まかな流れ以外はほとんど忘れてしまっている。月日の経つのが早いというべきか、私の記憶能力に難があるというべきか(おそらく後者)。

本作は、この当時でも興行成績2.6億ドルに達しているとのことだし、この年のアカデミー長編映画賞も取っているので、商業的にも批評的にも大成功を収めたといって間違いはない。そんなこんなの、「2位」である。

ちなみに3位は『カールじいさんの空飛ぶ家』で、日本のアニメでは7位に『かぐや姫の物語』、10位に『風立ちぬ』が入っている。

 

物語のあらすじは言うまでもないかもしれないけれど、超人的な特殊能力を持つ「ヒーロー」が時代の流れとともに社会の隅に追いやられ「一般人」になりすました生活を送っているという世界で、もともとインクレディブルのファンだった少年シンドロームがインクレディブルに冷たくあしらわれた幼い頃の経験から自らがマッドサイエンティスト・ヒーローとなってあらゆる巨大殺戮マシンを開発しかつての復讐を企てるも、インクレディブル一家全員が力を合わせてそれに対抗していくというもの。

まあ、おもしろいといえばおもしろい。

ピクサー制作の映画ということで映像のクオリティ、具体的にはCGアニメーションの技術ということになろうが、これには文句のつけどころがない。たとえば中後半、ダッシュ君というチビッ子の長男がジャングルで、刃のようなものをウィンウィン回転させる機構を持つ飛行隊から猛スピードで逃げ回るシーンがあるが、そのスピード感が臨場感をもって表現されているので、テンポのいいチェイスものとしてスカッとする出来になっている。

その他にも、スーパーヒーローものに「家族」という設定を付加した以上、和やかな家族映画としての要素も持たさざるを得ないわけだけだが、ここもまあ、ひととおりの演出はできている。

まずインクレディブル夫婦間の、「ヒーローへのノスタルジーにあこがれる夫」と、「過去の栄光にとらわれず普通の人間として社会生活を送ってほしい妻」という対立・葛藤。そして、特殊能力を遺伝的に有するにもかかわらず上記の家庭方針からそれを思うままに使うことを許されない子どもたち。

そして結局、特殊能力を自主的に封じ込めてきたこの家族は最終的に夫の生命を脅かす敵のためにその「決めごと」を解放し、立ち上がるというわけである。

大筋はこの程度のもので、その中にフロゾンという、まあ簡単に言ってしまえば「氷使い」のヒーローが参戦しながら、物語は結末へ向かっていくわけだ(ちなみにこのフロゾンというキャラクターはあくまでオマケのあつかいをされてはいるが非常に気に入っている。掌から繰り出される氷の柱が非常に画面映えするし、それをどんどん発射してレール代わりにしその上をスピードスケーターのように滑っていくさまがカッコいいのだ。しかし、相手はインクレディブルをもっても倒せないほどの怪力のマシンなので、噴射する氷は武器としては一寸の足止めというくらいにしか役立っていない。やっぱりオマケキャラなんだね)。

 

しかしまあ・・・、これだけなのである。

ヒーローがヒーローであることに疑問を持ったり、ヒーローの正当性が社会的に疑われ始め一般人として生活せざるを得ないというようなプロットは、アメコミの本場ではほかにも色々な作品が既にあるし、家族モノというところをフューチャーしていくにしても、この家族にはそもそも特に家庭的不和や経済的苦境があるわけでもない。唯一中盤から、敵側の秘書である謎めいた銀髪女性ミラージュと夫との関係を妻が怪しむ場面があるが、少々の不安を抱く描写を少し見せただけで、そのあとミラージュとインクレディブルが抱き合うシーンまで目撃することになるにもかかわらず、おとがめなし。「そりゃインクレディブルを信じてるからさ」といわれればそれ以上何も言えないが、とにかくこの映画は、家庭不和をこてにして新しいスーパーヒーローものを描こうとしているわけではないのだなと思った。

つまり、普段は温和にうまくいっている家族がたまたまヒーローだった過去を持ち、昔のインネンをつけて現れたイカれたギーク野郎を、家族のきずなでやっつける映画。

つまり、言い切ろうと思えばこう言い切れてしまうストーリーとしての弱みが、70点を下回らせてしまった。これで映像技術までずさんなものだったら、もっと低い点数になっていただろう。

僕が評価したい映画は、日々の生活に新しい色を加え、刺激を与え、色々なことを考えさせてくれる映画だ。つまり、観賞後に「何か」を心に置き残してくれる映画だ。

点数はどれだけその「何か」を僕に残してくれたかを示すものでありたい。

漫画の世界でも、絵は下手でも心にずっしり来るマンガはいくらでもある。そしてその逆もしかりということだ。

この映画のおまけには『カーズ』の予告編が入っていて、そういうところがまた月日の流れの速さを感じさせてくれるわけだが・・・。笑 恥ずかしながら『カーズ』は未見なので、みてみようかなと思った次第である。